2.ヘテロダイン方式・バットディテクターの回路

ヘテロダイン方式と言っても詳しく見ると3つのタイプがあります。
以下にヘテロダイン方式バットディテクターのブロックダイアグラムHE1a、HE1b、HE2、HE3を示します。
実際にHE1a/bとHE3を試作した結果を以下にレポートします。
HE2に付いてはweb上の情報を元にブロック図を作りました。

(1)HE1aタイプのバットディテクター


ヘテロダイン方式としてweb上で簡易型の製作発表されているものがこのHE1aタイプに相当します。

これにはヘテロダイン方式として最低限必要なブロックが入っておりこれ以上簡略化は出来ないようです。
ヘテロダイン方式と呼ばれていますが中間周波増幅が無いので無線機的な分類をすればダイレクトコンバージョン式と呼ぶのが妥当のように思います。
簡易型の場合の多くは、HFアンプとローカルオシレター、LFアンプの電圧増幅段にもCMOSのインバータ用ICが用いられています。
SNを良くしたい場合はアナログ用のローのイズアンプを使用するのが良いと思われます。


(1)HE1bタイプのバットディテクター

簡易型よりも度感度を良くしたいとか、SNを良くしたい場合は簡易型では省略されているブロックを追加する必要があります。
調整ヶ所も少なくほどほどの感度で我慢をすれば製作し易いと思います。
うまく作れば3のタイプヘテロダイン式の中で一番素直な音が得られます。

これもHE1bタイプと同じ理由でダイレクトコンバージョン式と呼ぶのが妥当のように思います。
プリアンプからMIX回路までは単一の周波数を増幅して高ゲインを実現しなければならないこと、
この間は20KHz以下〜120(140)KHzまでの広帯域の増幅が必要です。
ただし,可聴音近くまで増幅してしまうとアコースティックフィードバックで発振し易くなるので、デテクト可能な最低周波数をあまり低くしようと欲を出さない方が無難です。

ゲインアップと共に起こりがちなSNの低下や発振に注意が必要で、かなり高い技術レベルが要求されます。
アースの引き回しや電源のデカップリングは無条件で教科書通りにした方が無難です。



HFプリアンプ:ローノイズのプリアンプを追加して感度UPを図ります。

AGC     :感度が高くなるとコウモリが近くにきた時の音量が大きくなりすぎて音が歪んでしまいます。
         AGCが全体のゲインをコントロールして聞きやすい音量にします。

ローパスフィルター:ローカルオシレターのキャリアーがもれてくるとAGCがうまく働かないのでローパスフィルターで
         キャリアリークを減少させ、LFアンプがキャリアーで歪むのを防ぎます。
         リークしたキャリアーと変換された信号との周波数比が少ないのでHe3型に比し切れのよいものが必要です。

         テープレコーダーに録音する時にもキャリアリークを減少させるとバイアスとの干渉を防ぐのに有効です。

ミキサー  :簡易型ではダイオードやトランジスタの比直線歪みを利用して変換しますがこの場合はキャリアリークというよりは
        キャリアは筒抜け状態となっています。
        ミキサー自体でキャリアリークを最小にするにはやはりダブルバランスミキサー(DBM)が良いと思われます。

ローカルオシレター:特性にこだわるならば矩形波発振回路ではなく正弦波発振回路がお勧めです。
        不必要な高調波を出さないのでイメージの発生を防ぐのに有効です。
        矩形波発振回路を採用する時はDUTUY50%がお勧めです。


(3)HE2タイプのバットディテクター
 HE2タイプの製作発表は海外のwebで見かけました。
 
 点線内はAMラジオ用のIC(TCA440)が使用されローカルオシレターとミキサー部が使用されるだけで、IFアンプ部やAGC使用されていません。
 HFアンプはトランジスタ1石、LFアンプは380の構成でした、回路はHe1aタイプよりもシンプルになります。
 高感度はHe1aタイプ相当かと思われます。
 高感度にするためにはICの機能を全て生かした次のHE3タイプに発展させることになります。


(4)HE3タイプのバットディテクター
このタイプの回路やブロックダイアグラムを公開しているページはまだ見かけていません。
製作記事も見かけませんが、修理した現物を解析して実在することが確認できました(*裏情報)。

・回路がシンプル割には高感度
 この方式はHE1bタイプで追加されたブロックをすべて含んでおり、回路が簡単な割に高感度が得られます。
 中間周波増幅回路もあり正真正銘のヘテロダイン式です。
写真は試作例です。
                  

・基本回路がAMラジオなのでコウモリが遠くにいるに時には、ラジオのチューニング時に局間で出るようなノイズがでます。
 広帯域増幅が必要なのはミキサー1までの間で、高ゲインの部分はラジオ用ICで良いのでHe1bタイプよりも製作は簡単です。

・完全に調整しなければバットデテクターとしてまったく機能しない。
 回路製作は簡単ですが調整はかなり大変になります(理由は下記)。

 

・各ブロックの説明

   HE3タイプは1stと2ndの周波数変換回路が存在し無線機で云うスーパーヘテロダインにそっくりの回路構成となります。
   これもAMラジオ用のICがそのまま利用できますが、違いは2ndの周波数変換回路が追加されることです。

   IFアンプ1にはIFトランスやセラミックフィルターもAMラジオ用のものが使用できます。

   2ndの周波数変換回路の出力がデテクトされた信号となるので、2ndIF信号は存在しません。
   無線機で云うダブルスーパーとシングルスーパーの中間的な構成になっています。

   但し、上図の回路構成のICはほとんど無く、ほとんどのICはIFアンプ1とIFアンプ2と検波回路がIC内部で接続されています。
   この場合はミキサー2はミキサー1とIFアンプの間に接続しなければなりません。
   それでIFアンプは受信信号とローカルオシレター2の発振信号の2つを混合した状態で増幅することになります。
   このため混変調とかローカルオシレター2の発振信号でAGCが働いたりする弊害に注意を要します。

   部品調達も容易で、回路的にはラジオを組み立てた人ならば簡単に出来そうな回路です。
   しかし、回路図のみを参考にして作ると半数以上の人は多分、大穴にはまるかも!!。


・調整が大変な理由1:
  AMラジオは放送局から電波が出ているので測定器が無くても市販の部品を使えば一応受信可能な状態になります。

・調整が大変な理由2:
  バットデテクターの場合は基準になる信号がないのです。
  コウモリが出てくるのを待っても一瞬の内に遠ざかってしまって調整をしようとした時にはいないのです。
  調整が出来ていなければデテクトすることすら出来ません。

 調整が大変な理由3:
  web上では調整の解説をしたドキュメントがほとんど見つからない。
  調整環境の整備、調整法の確立など、すべて自力でやるしかありません。

・参考
  ヘテロダイン式バットデテクター(He3)の調整に必要な測定器
  汎用のFGと超音波スピーカー(20KHz〜120KHz)、または別ページにあるBDチェッカーのようなものを作ると便利です。
  オシロスコープ、周波数カウンタ(2ndオシレターの調整に必要)などが必要です。


 *裏情報
 別ページで解説をと考えていますがMini−3等はこの回路構成になっています。




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