4.試作2号機    ( Ver1 )

 2号機は数種の回路を製作、ようやく納得のレベルに達したようです。
 念願の2アンテナでの練習が出来るようになりました(写真右は試作2号機の外観)
 この先はプリント基板化した回路でさらに細部の調整を図りたい。

試作2号機での改善目標
  オクターブピッチを正確に測定して各オクターブのピッチ均等化を図る
  音色付加回路の追加
  VOLコントロール回路の特性改善
  アンテナから入ってくるノイズや音の濁りの除去など
 課題がいっぱい



  1)オクターブピッチの均等化
     オクターブピッチ測定用スケールを製作してオクターブピッチを測定しました。
     C0(約32.7Hzのド)、C1・ ・ 〜C7(約4186Hzのド)となるピッチアンテナとの距離を測定しアンテナコイル(*1)他の調整をしました。
     グラフはアンテナコイルが無い時とアンテナコイル他が調整された時のオクターブピッチ特性の比較です。
     グラフはアンテナコイル他の調整によって低音側から高温側までのオクターブ間のピッチがほぼ均等化されていることを示しています。
     測定時に測定者はピッチアンテナから約1.2mの位置に立ちましたが実際に演奏する時は演奏者の肩とピッチアンテナとの距離は、
     60Cm以下位(個人差がある)かと思われ体全体とアンテナ間の静電容量が加わるので低い方(C7側)の直線性はかなり影響を受けると思われます。
     グラフでは7オクターブが測定されていますが基板化した後、上記を考慮して5オクターブ強(6オクターブ弱)として調整することで
     更に演奏しやすい特性にすることや、低音域専用のテルミン(バステルミン?)とするなどのバリエーションが考えられます。


























                          オクターブピッチ特性 (横軸はアンテナからの距離)                         ピッチ回路基板とアンテナコイル

     注) *1:アンテナコイル
           ピッチアンテナとピッチ用発振回路の間に接続されるコイル(リニアライゼーションコイルと呼ばれることもある)のこと。
           低音から高音までの各1オクターブ間のピッチ(移動距離・アンテナまでの距離の差)を均等化するための補正をする。




  2)アンテナから入ってくるノイズ(電磁波による影響)の対策
    これはS/Nを上げるしかないのであると考え発振出力を大きくした。
    混合回路はダイオードによる回路からDBMとしてキャリアーと入力信号の抑圧を図った。
    下記の点も併せて対策したことで可聴音に変換された信号も大きくなり、S/Nも格段に良くなった。



  3)ACアダプターとアースに関する問題点の対策
    テルミンは右手先とピッチアンテナとの間の静電容量(ほぼ10PF以下)を変化させ、この間に流れる高周波電流を変えることで音程を変化させて演奏をします。
    しかしこれだけでは高周波電流の帰り道がありません、戻り道が不十分であると音が濁ったりノイズが入ったり、ピッチやボリュームコントロールが不安定になることがあります。
    戻り道は演奏者の手先から体内を通り抜け足の裏から床面へ、さらに下記のようなルートでテルミン内電源のアースラインに戻ります。

    戻りの経路1: ACアダプターを使用する時
        床面=>大地アース=>電灯線(AC100V)のアース=>ACアダプターの100V側とDC側の間のリーク(漏洩)電流=>テルミン内のアース

        問題はACアダプターの特性が大きく影響をしていることです。
        安全かつ特性の良いACアダプターは絶縁特性が良好でなくてはなりません。
        しかしテルミンが良好に働くためには上記のような電流の戻り道が必要です。
        ほとんどのACアダプターは高周波電流も絶縁されるのでテルミン用として不向な場合が多く、
        この相反する条件を満たすACアダプターを市販品から入手する事は至難の業なのです。

        ACアダプターの特性がテルミンに合わない時は補助的に電流の戻り道を確保する必要があります。
        一番安定な方法はテルミンのアース端子とコンセントのアース端子等の間をアース線で接続することです。

        コンセントにアース端子が無い時は電源コードがコンセントに接続されている電気製品のアース端子や筐体の止めネジ等に
        接続するとアースの代用になる場合があります。
        この時の電気製品はスイッチを入れる必要はありません、むしろ電源は切ってあった方がノイズ的に安全かも知れません。

        アースや代用アースに接続できない時は(嫌な時)の対策として安全で電気用品安全法に違反しない方法を考えました。
        この代代用アースは苦肉の策ではありますがかなり有効な方法であることが解りました。
        早い時期に紹介できる見込みです。



    戻りの経路2: 電池を使用する時

        テルミンのアース端子アース線でを大地にアースする。
        電池を使用する時でも上記のコンセント回路による代用アースや代代用アースでも効果があります。


  4)音が濁る
       調べたところ外部からのノイズの影響とは別にピッチ発振回路とリファレンス発振回路双方にワウもしくはフラターとも云える周波数の変動があることが解った。
       原因は電源の微小なリップルとL可変コイルのコア-のガタによるものと思われ、数Hz〜数10Hzの周波数の変動があることが解った。
       さらに二つの発振回路が引き合うことで起こる互いの発振周波数の変動(テルミンらしい音?)もあまり多いと良くないかも知れません。
       発振回路の周波数変動対策
       L可変コイルの使用を止め
       電源回路は電圧の安定化と各回路部分毎に十分なデカップリングをする
       バリキャップも電源のわずかな変動やリップルの影響を受けるのでピッチ調整用の使用を止めた
  
  5)周波数のドリフト

       周波数がドリフトするとゼロポイントが安定せず演奏中に微調整の回数が増えて不都合である。
       周波数ドリフトを無くすることは不可能に近いがピッチ発振回路とリファレンス発振回路を同一回路とすることで結果的にドリフトが少なくなると考えられる。
       アンテナ回路以外は両者の回路を同じ部品で構成しました。
  
       L可変コイルの使用を止め
     
  ピッチ調整用のバリキャップの使用を二つの発振回路とも周波数の調整ようにポリバリコンを使用


  5)音色付加回路の追加
       VCA用や波形の加工にアナログシンセで多用されていたトランスコンダクターアンプを探したが殆どがディスコンで入手困難であった。
       かろうじてLM13700はセカンドソースもあり入手できることが解った、Etherwaveにも使用されているICなので避けたかったが仕方無くこれに決めた。
       これをVCAと波形の加工(Dutyの可変と矩形派的歪の加工)用に使用した(ピッチ回路と同じ基板にマウント)。
       音色付加回路の操作法と波形の変化状態は別ページとしました。

  6)ボリュームコントロール回路の変更
       ボリュームコントロール(VCA)の回路も大幅に変更し、たぶんこれまでに試した人がなかったと思われる回路となった。
       発振回路はシリコンOSC(IC)としたことでLCの無い発振回路となった。
       ボリュームコントロールVRがシリコンOSCに直接接続できるのでこちらでもバリキャップは不要となった。
       ボリュームアンテナ回路を直列共振とすることで高い制御電圧が得られVCAとのマッチングがし易くなった。
       右の写真の基板にはVOL用発振回路と制御電圧回路がありVCAはピッチ側に実装されている。




                                                                                   ボリューム用発振回路と電源部
 

 



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